かりん先生のドックトレーニング講座

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強化のスケジュールと行動を引き出す方法

◇強化のスケジュールと行動を引き出す方法◇
 
1、強化のスケジュール
 
私たちトレーナーはいつ犬に報酬を与えればいいのか?
科学に基づいた様々な強化スケジュールがあるが犬のトレーナーは主に2つの学習段階に合わせて2種類を使い分けている。
 
<2つの学習段階>
①行動の取得段階
②行動を流暢にしていく段階
 
<2つの強化スケジュール>
①連続強化スケジュール
②変動強化スケジュール
 
<連続強化スケジュールの特徴>
※犬が好ましい反応を返すたびに報酬を与えること
●行動の獲得段階で使うのがベスト(新しい行動の覚え始め)
●適切な時期に変動強化スケジュールへと変えなければおやつがないとしようとしなくなったり問題が生じてしまう。
 
レーニング開始当初は一回一回のご褒美が犬にトレーニングの目的を伝えるための「貴重な情報源」になり、それだけにご褒美を与えないと犬は混乱し、「自分に何が求められているのか」がわからなくなってしまう。
ある行動の定着を早めるには、その行動に対して「繰り返しご褒美を与える」のが一番の早道である。
 
<変動強化スケジュールの特徴>
※犬がとった行動に対して報酬をランダムに与える。
●ランダム報酬、連続強化スケジュール、部分強化とも呼ばれている。
●その行動が消去されにくくなる。
 
ある行動の生起頻度が上限に達すると毎回与えていたご褒美の頻度を減らしていくようにする。最初のうちは今まで通り、ほぼ毎回ご褒美を与え、その後2回に1回や3回に1回など「不規則に報酬を与え」犬がどのタイミングで報酬をもらえるかをわからないようにする。最終的にはごくたまにしかご褒美を与えない段階にまでもっていく。毎回ご褒美をもらっている犬にとって、ある日突然ご褒美を打ち切られるということはこれまでの常識を覆す一大事である。このようにいきなり強化がストップするとせっかく定着していた行動が消去されてしまう。しかし、たまにでもご褒美がもらえると消去はされにくい。
 
※非常に大きくて価値のある思いがけない報酬
犬にとても素晴らしい行動をとったことを伝えるために使う。
ジャックポットは犬のトレーニングへの「やる気」を飛躍的に伸ばすことが出来る。
ただ「使いすぎないように注意」する。
 
2、行動を引き出す方法
 
犬のトレーニングでは犬にじかに接することができるので、目的とする行動が自発するのをただ待つのではなく色々な「近道」を使ってこうした行動を誘発し、定着を図ることが出来る。ここでいう「近道」とは「誘導」することである。
直接体に触れる場合を除き、こうした行動は専門用語で「エリシテーション」と呼ばれている。ただし犬のトレーニングにおいては「エリシター(誘導因子)」という言葉はあまり使わず、「プロンプト」という言葉の方が一般的に使われている。
プロンプトとは「定着させたい反応」行為のことで、例えば犬に向かって手を叩いたり、かがんだりすることは「こっちにおいで」という合図になるために、呼び戻しのプロンプトとなる。
犬のトレーニングの場合、プロンプトは犬を誘導する手段としてとても役に立つ。
例えば、フードのほうに鼻先を向けることを犬に覚えさせるとフードはルアーとして機能する。フードを見せながら犬の頭を思い通りに動かせるようになれば実に様々な行動を誘発することができる。
 
<物理的に(直接触れて)促す>~犬を物理的に補助して望ましい姿勢をとらせる~
●特徴
・犬の静止に関係なく行うことができる
・体に触れられることが嫌いな犬は触れることに対して対処しようとし「学習スピードがかなり遅くなる」可能性がある。
・望ましい体制を作りづらい。
 
<ルアーを使う>~犬が興味を持つものを扱って犬を集中させ、犬を望ましい姿勢に導く~
●特徴
・力を使わずに誰でも簡単に出来る。
・犬がご褒美をもらうために「積極的にトレーニング」する。
・行動がある程度出来あがってからも使い続けると、犬はルアーを合図そのものと考えてしまう。
 
<行動を捕らえる>~犬が自発的にその行動を取るまで待ち、その行動に対して報酬を与える
●特徴
・犬の意識を集中させられる。
・犬がその行動を取るまで待たなければならない。
 
<行動の形成・シェーピング>~少しずつ望ましい行動に近づける方法を使って報酬を与える。
・複雑な行動を教える時に役立つ。
 
椅子の上に上がることへの適応
犬が椅子のほうを向いたらご褒美→犬が椅子の方向へ一歩歩いたらご褒美→椅子を臭ったらご褒美→椅子に顎をのせたらご褒美→椅子に手をかけたらご褒美→椅子に乗ったらご褒美
 
<行動の連鎖>行動を一つ一つの小さなパーツに分けて段階的に教え、全てを組み合わせる
●特徴
・難しいものも、一つずつすることによって簡単な動きとなり犬も理解しやすい。
 
おいでへの適応
・飼い主が犬から離れる間、犬はお座りをしている。
・犬は合図を待つ。
・合図で犬はトレーナーの元へ走る。
・犬はトレーナーの前でお座りをする。
・合図で犬はトレーナーの横の定位置に移動する。